ごちゃごちゃのOS
昔,IBM360という汎用大型コンピュータがあってね。
そのOSを作るとき,みんなで寄ってたかって,
やっとのことで作ったもんだからさ,
何が何だかわかりゃしない。
ごちゃごちゃで,
作った会社の担当者しか分からなくなってしまって・・・
それで,大学でコンピュータを教える先生たちが
困ってしまったんだって。
手作りのOSとBCPL言語
そしたらね,捨てる神あれば救う神ありってね。
DECって会社が,大学に裸のコンピュータを貸したり,
安くで提供し始めてね。
そのコンピュータは,PDP7っていうミニコンです。
パソコンなんかない時代だから,
「ミニ」と言っても結構でっかいんだよ。
アメリカにマーチン・リチャードという大学の先生がいてね。
「手作りのOS」を作り始めたんです。
まず,システムを記述するために設計した言語が,
BCPL(ビーシーピーエル)っていう言語。
この種の言語を「システム記述用言語」といいます。
機械語に近いところを記述するための言語が,
アセンブラじみたBという言語。
この言語はケン・トーマスという先生が作りました。
このBで書かれたPDP7上の手作りOSが,UNIXのルーツです。
UNIXをCで書き直した人
そして,その頃,流行っていたオランダのダイクストラ先生の
「構造化プログラミング」の考え方を取り入れて,
1973年にシステム記述用言語を作った人がいました。
AT&Tベル研究所のデニス・リッチーという先生です。
デニス・リッチー先生は,BCPLの2番目の文字をとって,
「C」と名付けたのです。
UNIX自体がOSを分かりやすいものにしようという
試みですから,B言語で書かれたUNIXを
全部C言語で書き直してしまったのです。
UNIXは,メーカから独立した研究グループが中心になって
作ったOSってわけです。
UNIXとCの普及
それで,大学や研究機関など,いろんなところに
実費程度の負担で配布されたのです。
アメリカでは,プライベイトOSとして研究用や勉強用に,
急速に広がってしまったのです。
(これがフリーウェアの走りですね)
UNIXが広まるにつれて,C言語も広まったってわけ。
1978年には,ブラインアン・カーニハン先生と
開発者のデニス・リッチー先生が共著で,
「The C Programing Language」という本を出しました。
古い人は覚えておられるかと思いますが,
邦訳は東大の石田晴久先生が出しましたね。
C言語が広まるにつれて,
C言語を色々な機種に乗せるための工夫を編み出した
ホワイト・スミスのような人もいました。
この工夫については,本講座の目的にあいませんから
やめておきます。
Cの標準化
Cは言語設計上は,そんなにきれいな言語ではありません。
構造化プログラミングの考え方を反映したっていうのなら,
むしろPascalのほうがきれいたど思います。
しかし,美人がもてるとは限りませんね。
何でもかんでも八方美人のPL/Iも,もてませんでしたね。
まっ,明るく,適当な範囲の人に好かれる人が,
もててしまうのです。Cって,そんなところがあります。
1983年には,米国の標準規格を決める委員会が
ANSIで発足しました。
みんなでよってたかってきれいにしようっていうんですね。
私としては,
バラエティがあった昔のほうが楽しかったのですが・・・。
最近のCの処理系の多くは,
1988年末に提出された米国標準規格に沿っています。
標準教科書も出ていますので,
本講座では物足りないという人は,そちらを見てください。
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