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現在の情報社会の進展は目覚しく,
家電組込みコンピュータをはじめとして
身の周りにはコンピュータがあふれています。
そして,パソコンは誰でも使える時代になり,
もはやパソコン操作ができるのが
当たり前の時代になってきています。
さらに,パソコンは1970年代の汎用コンピュータの能力を
はるかに上回るようになり,
当時,汎用コンピュータ上で骨組みの構造解析や
有限要素法のプログラム開発を行っていたのが,
はるか昔のことのように思えます。
このようなコンピュータ能力の向上によって,
大型汎用コンピュータでしか利用できなかった有限要素法,
その他の数値解析もパソコンでも実行できるようになりました。
ソフトウェア環境も整備され,
プロのプログラマでなくても
表計算ソフト等を用いて気軽に
プログラムを作れるようになりました。
これに伴い,旧来,研究開発部門でしか
利用されることがなかった有限要素法も,
一般の技術者にとって身近な存在となりました。
現在,様々な汎用有限要素法プログラムが市販されています。
計算根拠や計算手法について無理解でも,
データ作成方法・操作方法さえ分かれば
誰でも有限要素法が使えるようになりました。
しかし,弾性力学の基礎知識なしに,
適切なモデル化や得られた結果の妥当性評価はできません。
得られた膨大な数値から意味のある結果を導き出すには,
やはり弾性力学の最低限の知識が必要です。
本書では,材料力学や弾性力学の復習を行った上で
有限要素法の基礎について説明します。
一方,汎用有限要素法プログラムが市販されているとはいえ,
これから有限要素法を学ぼうとする技術者や学生にとって,
まだまだ高価です。
本書では,手軽に有限要素法を体験していただくために,
身近な表計算ソフトMicrosoft Excel の
Visual Basic for Application(VBAと略称)での実現例を示します。
さらに,有限要素法を適用するには,
膨大な要素分割データをいかに素早く作成するか,
メモリ容量を少なくするために
バンド幅をどのようにして縮小するか
などの工夫が必要です。
このような場面でもVBAは活躍します。
汎用有限要素法ツールでは
要素分割用のプリプロセッサが用意されていますが,
本書では,有限要素法のデータを
プログラムで自動生成するというアプローチをとっています。
バンド幅の縮小もプログラムで自動的に行うことを前提にしています。
本書が,読者の皆さんの有限要素法習得への一助になれば幸いです。
なお本書の内容は,一時期,PDFの無料公開を行っていました。
その際,皆様からのご指摘,ご意見をEメールで頂きました。
これらのご指摘やご意見をなるべく取り入れたつもりです。
ご指摘,ご意見をお寄せいただいた方に感謝すると同時に,
本書が,読者の皆さんの有限要素法習得への一助になればと
願っています。
2013年4月
白 井 豊